Moto Italiane Anni 70 古いイタリアンバイクが好きなら、この本は見逃せない。そしてもし、バイクに加え、グラフィックデザイン(の歴史)に興味を持っていれば、この本は手放せない。MOTO ITALIANE ANNI 70。直訳すると“70年代のイタリアンバイク”である。
 厚いハードカバーの背にプリントされたタイトルを見た瞬間に、どんなマシンたちが登場するのかは、おおよそ想像できた。わからなかったのは“見せ方”である。今までに見たことのある、いくつかの豪華本が頭に浮かんだ。ずしりと重い本書を手にとり、ハードカバーの表紙をめくってページを開くまで、わずか2〜3秒の短い時間に、こんなに期待感が高まったのは久しぶりだ。

 さてその中身は…。“やられた!”というのが正直なところ。予想はすべて良い方向に完全に裏切られ、パラパラと斜め読みするはずだったのが、最初からまったく敵のペースに嵌められてしまった。
  1970年代当時モノのポスターとカタログによる、いきなりの集中攻撃である。まず最初に、カタログ、ポスター、印刷広告をふんだんに使って、1970年代とはどんな時代だったのかを思い起こさせるのが第1章。年ごとのガソリン代、国内選手権500ccのチャンピオン、世界GP500ccのチャンピオン、イギリスとアメリカのバイクオブザイヤー並ぶユニークな構成に、編集者のセンスがうかがえる。
 続いて、雑誌の表紙(日本の雑誌もあり)をビジュアルの中心に据えて、1970年代のイタリアンバイクとそれを取り巻く世相を回顧。そして、カタログを中心として展開される、1970年代の“ニューメカニズム”のページも楽しめる。ここまでがイントロか。
 続いて、メーカーごとの1970年代のラインアップを、広報写真とカタログを中心に構成。1972年のベネリ・モトビ250 2C、イタルジェット・カリフォルニア650、ラベルダ1200TS、モト・グッツィV7スペシャル、MVアグスタの小排気量マシンなど、珍しい機種の貴重な広報写真やカタログも多数収録されている。
 そして最後に、1970年代のイタリアの旗艦というべき10台のマシンについて、当時のカタログをふんだんに使ったメカニズム解説、主要諸元、マイナーチェンジによる塗色の変遷などの本編に突入する。
 約240ページの本書のP.93〜237にわたる
“LA 10 ITALIANE CHE HANNO FATTO GLI ANNI SETTENTA”
に収録されているのは、ベネリ750Sei、ドゥカティ750SS/900MHR、ラベルダ750SF/750SFC/1000 3C、モト・グッツィ750V7Sport/850 Le Mans、MVアグスタ750Sport/750Americaの10台。文句なしの名車ぞろいだ。
 問題は、テキストがイタリア語だけだという点。しかし、書かれた内容が読めないからといって、この本の価値や眺める喜びが減ることはないと断言したい。


「Moto Italiane Anni 70」
ハードカバー/W250×H280/カラー/
伊語/239p .........税込価格 7,980円 (本体価格 7,600円)