ケビン・シュワンツ物語 1993年、世界選手権ロードレースGP・500ccクラスのチャンピオンを獲得し、それまでの“無冠の帝王”というタイトルを返上したケビン・シュワンツ。その彼の、プロフェッションルライダーとしての10年の足跡を振り返るドキュメンタリータッチの映像集。
 1980年代後半から1990年代序盤にかけての世界GPでは、エディ・ローソン、ウェイン・レイニー、ワイン・ガードナー、そしてケビン・シュワンツの“4強”がしのぎを削っていた。バリー・シーン、ケニー・ロバーツ、フレディ・スペンサーといった歴代帝王が去った後、5年連続で500ccのチャンピオンとなったミック・ドゥーハンが台頭するまでの間、1986〜1994の9シーズンが4強激突の時代だ。

4強の中でも、とくにシュワンツとレイニーの2人による壮絶な争いは、見る者を釘づけにし、ときには恐怖さえ感じさせたものだが、そこまで激しいバトルができた背景には、AMA時代から続く彼ら2人のライバル意識と信頼感があったのだと、このDVDは教えてくれる。ヨシムラやスズキとの関係は、いつ、どうやって始まったかも明らかになる。
 激しい一騎討ちの中でも、とくに印象的だったのは1989年の開幕戦・日本GP。このレースは、88年から取材する側に回った私にとって、今なお忘れられないレースのひとつである。決勝は、確かプレスルームのTVモニターで見ていたが、スタートからゴールまで、シュワンツとレイニーのバトルを固唾を呑んで見守った。このDVDでも、このレースにはとくに長い時間を割いている。
 GP500のタイトルは、結局、1990〜92年の3年連続でレイニーのものになるが、その間のシュワンツの成績には浮き沈みがあった。とくに1992年の不振は、彼自身の「キャリアを通じて築き上げた自信が無残に剥ぎ取られていくようなシーズン」という言葉に表れるように、惨澹たるものだった。
が、翌1993年には遂に“無冠の帝王”のタイトルを返上し、500ccのチャンピオンを獲得。このシーズンを振り返る彼自身の言葉と、闘いぶりを記録した映像の数々は、魅力たっぷりの名場面集といえる。
 その彼は、1995年のシーズン途中で引退してしまうのだが、それがいかに突然かつ衝撃的だったか、そして、なぜそういう形で引退したのか、さらに、引退後にレースに出場する気はなかったのか…などの疑問を、錯綜とした当時の情報ではなく、落ち着いたシュワンツ本人の語りによって明らかにしている。
 テキサスにあるシュワンツの牧場で収録した独占インタビューはDVDのみの特典で、スズキのバイクについて、500ccにおける体重管理について、シーズンオフのフィジカルトレーニングについて、レイニーがいないGPでの戦いの日々について、そして、グランプリとは…とった質問に答えてくれる。


「ケビン・シュワンツ物語 DVD」
DVD/本編70分・特典映像6分/日本語/税込価格 2,940円 (本体価格 2,800円)