No Compromise わ! オランダ語! や、全く読めないし、挨拶さえできないのだが、字面を見ると懐かしい。ちなみに「ドンカーブート」よりも「ドンカーフート」と発音するほうがオランダ語的だ。英語圏の人たちは平気でドンカーブートと発音しているようだが…。
 私には、ディープなクルマの世界、中でも小規模コンストラクター製マシンについての知識はほとんどないから、ドンカーブートってのは、てっきり英国製のクルマだと思っていた。そう誤解させたのは、ロータス・セブンの後継機種だと思っていたから…。まあ、その程度のことは私でも知っていたというわけだ。

 この本を読んで初めて、ヨープ・ドンカーフートというのがドンカーブートの設計者の名前であることと、彼が技術者としてどのような経歴の持ち主なのかを知った。まさに書名の“No Compromise”(妥協なし)を地で行くような男である。
No Compromise だが、この本は、ヨープの人物伝でもなく、彼が手がけてきた数々のチューニングカーやロータス・セブンの写真集でもない。ヨープが自らの名を冠したドンカーブートの開発史であり、島国イギリスが送り出すキットカーからヨーロッパ大陸で通用するコンプリートカーへの道のりと、現在のドンカーブート・アウトモビーレン社をハード/ソフト両面から詳述した社史であり会社概要でありカタログなのだ。
 後半の1/3ほどは、ドンカーブート・オーナーへのインタビューで構成されており、それぞれのオーナーを通じて、現在のドンカーブートの魅力を解き明かしている。巻末にはスーパー・セブン1.6、S8/D8シリーズ、D10、そしてD20、J25に至る各モデルの詳細諸元表も付属しており、これ1冊で現在のドンカーブートを知り、眺め、楽しむことのできるユニークなオフィシャルブックである。
No Compromise ドンカーブートというのは、二輪の世界におけるビューエルやビモータになぞらえることができるかもしれない。共通点は、強烈なパーソナリティと技術的信念を持った設計者が、自分の夢を形にするにあたって貫いた“No Compromise”な姿勢ではなかろうか。
 競技用車両やキットカーという“逃げ”を潔しとせず、大陸ヨーロッパの厳格な安全基準に果敢に立ち向かい、それを満たしたあたりにも、同じ土俵で戦って初めて独自性が評価される…という技術者としてのプライドが感じられ、称賛するとともに、うらやましくもある。

No Compromise
ハードカバー/H250×W250/カラー/英・蘭語併記/130p
税込価格 19,950円 (本体価格 19,000円)