01 俺は小さい頃、大工さんが家を建てるのを見てるのが大好きで。小6の頃かなぁ、隣の敷地に家建てるのを、ヒマさえあえればずーっと見てたんだけど、中に名人の児玉さんっていう大工がいて、その人は手際がすごく鮮やかで、んで時折「うまい!」「うまいなあ」って自画自賛しながら作ってたんよ。それを見てるのが楽しくて楽しくて。
このDVDは、八武崎(やぶさき)さんっていう、板金の名人の仕事ぶりをただひたすら追いかけたという、ウルトラストレート剛速球な作品なんよ。それはもう、一切の演出も効果もCGもなんもなく、ただひたすら八武崎さんの仕事ぶりを追っているだけという。

その仕事ぶりが、どこかあの大工の児玉さんにだぶっちまって……。「うまくねえな」「ちきしょう、うまくいった」とか独り言を言うところなんかも。とにかくいい味なんよ八武崎さん。いったい何歳なんだろ八武崎さん。そういう個人的な紹介とかも一切なく、ヘタすりゃ顔もちゃんと映してなく(映ってるのはほとんど手元のみ)、ただひたすら板金仕事を追ってるだけなの。それが、涙が出るほどいい味なんよ……。
八武崎さんが使い分ける道具の数々がまたいい味でさぁ。48年使ってるハンマーとか、亜鉛のハンマーとか銅のハンマーとか、とにかく使い込まれたいろんなシブすぎる道具が出てきて、それ見てるだけで「道具に感動!」なのね。名人もすごいけど、道具もすごいなあ、なんて。
02 考えてみると道具って、人間を人間たらしめるかなり根本のところにあるものだよね。人間が動物から人間になったのって、道具を使い始めたおかげでしょ。たとえばさ、縄文人がどんぐりを食べるために作った石器やアク抜き装置だって、今俺が作ろうと思ったらとてもムリ。でも人間はそれをやって、人間になったわけだよね。そっからどんどんシステムを高度化して、ここまで来たわけだよね。
自動車のボディパネルは、金型とプレス器があれば一瞬でできちゃうけど、それを人間が自分の手で作ったり直したりしようと思ったら、ここまで名人の技が必要なんだ! ってことに慄然とさせられるんよ。ああ、人間はこういうところを通って、現在の社会を構築したんだなぁ、人間ってすごいなぁって。
  この作品は、「若き板金マン、旧車愛好家に捧ぐ」ってことだけど、そういう限定した層に限らず、すべての人を感動させてくれる。これは昔NHKでやってた『手仕事にっぽん』の世界だ! 八武崎さんが鉄と対話し、鉄をわが友、わが家族としている姿に打たれました。八武崎さん最高です。
八武崎名人直伝 プロフェッショナル板金テクニック Vol.1 DVD
フロントフェンダー修理編

DVD/95分/日本語/税込価格 3,150円 (本体価格 3,000円)


八武崎名人直伝 プロフェッショナル板金テクニック Vol.2 DVD
トヨタスポーツ800再生編

DVD/60分/日本語/税込価格 3,150円 (本体価格 3,000円)